1 はじめに
 前回、憲法の勉強ってなんであんなに難しいのか、ということについて書かせていただいたところ、思った以上の反響をいただき、「次の更新楽しみにしています」「早くブログも更新してください」との声をいただきました。
 大変ありがたいことですが、司法試験から1年以上経ってしまっている上、自分も考えがまとまっていないので、ブログ更新から逃げていました。だって、憲法の勉強難しいですもん…。
 ただ、司法試験の短答の合格発表もあり、合格思考憲法の改訂者様から「改訂版合格思考憲法」を直筆サイン付きを献本していただいたので、そろそろ重い腰を上げて更新しようと思いました。

2 得意と不得意
 憲法の勉強は、得意な人と不得意な人が結構はっきり分かれる傾向にあると思います。
 また、面白いのが、(僕の周りの人だけかもしれませんが)憲法(及び公法系科目)が得意な人は、民事系科目が不得意という傾向があると思います。
 そして、だいたい憲法が得意な人に「なんでそんなにいい憲法答案書けるの」と聞いたところ、「何でなのか自分もわからない」「抽象的な議論の方が好きだからかも」というあいまい不明確な回答が来ることがしばしばありました。
 ちなみに、私自身は、民事系科目の方が好きで、憲法はどちらかといえば不得意な方だと思います(とは言っても司法試験では憲法A評価をとることができましたが)。
 では、なぜそのような傾向に分かれるのでしょうか。
 よく、憲法は議論が抽象的で、民法は議論が個別具体的な比較衡量にあるので、得意・不得意が分かれるからだ、と説明されます。
 しかし、これは若干的外れかなと思っています。憲法でも具体的な比較衡量は当然行いますし、民法であっても、抽象的な法の趣旨に遡って議論をする必要があります。
 これは、ほんと思いつきですが、前回の記事http://gatsulaw.blog.jp/archives/24367802.html で書いた通り、学修の方法の違いがあるのかな、と思います。
 民事系科目は、コツコツと理解と暗記を積み重ね、書けることを少しずつ増やしていくことで理解が進み、点数が上がっていきます。なので、論証集や暗記が功を奏しやすく、1冊の本や問題集を徹底的にやりこむことが大切になります。
 他方で、憲法は、こう言ってはなんですが日本ではまだまだ議論が発展途上にあり、例えば、特定の論点に関して、民法のように特定の見解(だいたい判例)が固まっているという部分は少なく、憲法の場合、判例であっても批判の対象になり新しい学説の方が支持を得ていることが多いです。
 なので、一冊の本を何回も読み込むよりも、いろいろな本を読んで、憲法の考え方(議論)を知り、最新の知識(学説等)をアップデートし、自分で憲法の議論ができるようになる必要があります。
 ゆえに、広く本を読み、大局的で本質的な理解を得ることができる人の方が憲法が得意になるのではないかと思います。

3 相伝される答案の書き方
 これは完全に的外れかもしれませんが、僕の周りの憲法が得意だった人は、だいたい「ものすごく憲法のセンスのある答案の指導者的な人」がいました。そういう指導者の下でゼミを組んだり答練をしたりしていたので、書籍では一読してよみとれないような考えかたや答案テクニックを持っていたように思えます。
 他方で、僕は学部時代勉強仲間がいなかった中、ひとりでコツコツと伊藤塾に通って勉強していたので、憲法の答案指導をほとんど受けたことがありませんでした。なので、そういう憲法的指導を受けた人との差をどのようにして埋めようか、相当に悩みました。とはいえ、ロー生の段階でそういう指導者を探すのも時間と労力がかかるので、僕はとりあえず書籍を読み漁ることにしました。
 いろいろと読んでいく中で、答案指導についてのテクを何とか獲得できそうな本として、憲法ガール、合格思考憲法、憲法論文の流儀(受験新報の伊藤たける先生の連載)を発見し、すべて通読しました。これらの本を読んだだけで、素晴らしい答案指導者になれるセンスがついたとは言い切れませんが、憲法が得意な人間の視点や考え方を盗むことができたので、なんとか司法試験までに憲法の答案もそれなりに自信をもって書くことができるレベルに持っていくことができたと思います。

4 まとめ
 今回も取り留めもないことをつらつらと書いていきましたが、憲法が得意になるかどうかはその人の学習環境や性格が結構大きく影響するかと思います。そして、僕は、憲法の学修が苦手(どちらかといえば細かいことを正確に暗記する方が得意)で、環境もあまりよくなかった(指導者的な人がいなかった)ので、ロー2年次までは憲法が苦手科目でした。
 ただ、世間に出ている本を読み漁ることでその穴はごまかし程度には埋めることができました。また、憲法は「いろんな書籍を読み漁る」勉強が適合する珍しい科目なので、積極的に色んな書籍に手を出してヒントを得るといいと思います。
 次回は、いつになるかわかりませんが答案例との向き合い方について書きたいと思います。